2023年6月30日金曜日

「行動することが生きることである」

 宇野千代さんの「行動することが生きることである」(昭和63年 海竜社)を読んだ。宇野さんというと和服姿でお歳を召されてからも大変お元気な作家、というくらいの認識しかなかったのだが、この本に魅了されてしまう。

 「人生は行動である 行動が思考を引き出す」という見出し、小見出しがこの本の入り口である。そして、次のような言葉が出てくる。「私にとって計画は何もない。ただ、ああしたい、こうしたいと、絶えず思い描いて、それが喩え、少々は無理なことであっても構わずにやってしまう。あの、いつでも何かを追いかけていく気持ち。大袈裟に言いますと、そういうことの一生であったなと、ふと思うのです。」


 この「いつでも何かを追いかけていく気持ち」は、私にとって非常に大切なものだということはすぐに分かった。この感覚を持っていた時期も確かにあった。「これをやりたい、あれもやりたい、そのための予定をこれを入れて、ああして、こうして」という気持ちは、幼い頃からずっとあった。社会人になっても、確かにあった。それが段々、何か別の変なものに乗っ取られてしまった。会社での肩書きとか、そういう何か抑えられるような感覚のものに乗っ取られてしまっていた。

 宇野千代さんは自分に正直な人だなと思う。私は自分に不正直である。あった。この何かをやりたい、やってみたい、という気持ちに蓋をしてしまわないこと。そのままを育てていくのだ。

 そして「人生は行動である 行動が思考を引き出す」という小見出しは、宇野さんによればこういうことである。「頭で考えることだけのことは、何もしないのと同じことである。私たちは頭で考えるのではなく、手で考えるのである。手を動かすことによって考えるのである。・・・小説を書くのも、手が動くのである。どんな大傑作を書くのでも、手が動くのである。手が動かないものは何もない。」見事。見事な言葉だ。


 この言葉も好きだ。「熱中する、夢中になる、何かが生まれる」「今になって考えるとほんとうに不思議なことですが、わたしには、何か思いついて、新しいことをし始めると、急に生き生きと熱中して、もうそのことだけしか考えられないほど夢中になって了う癖があるのでした。」


こういう文章を読んで噛み締めると、自分にも勇気が湧いてくる。


#宇野千代 #書評 #行動することが生きることである

 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿